ノーベル文学賞作家 川端康成の別荘売却、解体か
(写真)川端康成が過ごした旧軽井沢の別荘。
軽井沢町桜の沢、通称ハッピーバレーにある川端康成の別荘が遺族の手を離れ、売却されていたことがわかった。近隣住民によれば、購入した不動産業者が解体するとの挨拶に来たという。
川端別荘は二つあったが、一つは既に滅失。この別荘は英国聖書協会の宣教師ジョージ・ブレイスウェイトから譲り受けたもので、木造2階建だが斜面を利用した地下1階がある。軽井沢高原文庫の大藤敏行さんの話では、「二つ所有していた別荘のうち一つは売却し、後にこの別荘を購入。ここでは小説『みづうみ』、エッセイ『落花流水』などの作品を書いている。新潮社の編集者が地下1階で原稿を受け取ったという記録もある」という。
軽井沢町ブループラークの認定候補にあがった際、交渉に当たった軽井沢ナショナルトラスト会員の木下裕章さんは、「ご遺族は、このままの形で残すことはできないと認定を固辞された」とし、相続人の死去により売却になったのではないかと推測する。
軽井沢文化遺産保存会会長で日本女子大名誉教授・増淵宗一さんは「斜面を活かしたおもしろい造りの別荘。ノーベル文学賞作家の別荘でもあり、軽井沢町はぜひ、保存することを検討してほしい」と語る。同保存会は軽井沢ナショナルトラストや軽井沢別荘団体連合会などと連名で、町議会議長に保存に向けた請願書を提出した。